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新入荷。石牟礼道子、伊藤比呂美、トリン・T. ミンハ、赤塚不二夫、食、文学ほか
新入荷の伊藤比呂美『木霊草霊』より引用。

 考えたら、今までだって植物のことをさんざん書いてきたのだ。詩を書きはじめた頃から、オオアレチノギク、セイタカアワダチソウといった、帰化植物の名前をいつも連呼していたのだ。それが私の詩の根本にあった。
 帰化植物だらけだった。私の育った東京近郊の裏町の路傍にも、あちこちにあった空き地にも、荒川の河原にも、生えていた。河原は子どもの足では遠すぎて、たどりつくだけで疲れ果てた。毎日遊びにいけるところじゃなかった。川は大きくて、轟音のする鉄橋が架かっていた。向こう岸に渡ることなんて考えもしなかった。河原には人間用の火葬場もあれば、動物のもあった。胞衣処理場もあった。子ども心にも、境界だ、境界にいるのだと思った。
 オオアレチノギクもセイタカアワダチソウもそのあたりに濛々と繁っていた。その繁りの中に足を踏み込めば、たまらなくぬかるんでいて、ゴミが棄てられていたり、油が溜まっていたり、動物の死骸があったりした。そこで死んだのか死んだからそこに棄てられたのか、子どもには見分けがつかなかった。ただ、ただ、境界のさらに向こう側へ連れて行かれるような気がして怖かった。そして私もほかの子どもたちも、やすやすと繁りに足を踏み入れ、泥だらけになり、油まみれになった。死骸を踏みつけては、声をかぎりにわめき叫んだ。
 えんがちょという遊びがある。当時、私たちはそれが大好きだった。いや、ほんとは好きじゃなかった。大嫌いだったのだが、しないではいられなかった。穢れがあればそれを忌む。そういう単純な遊びだ。そして、私たちは、河原に足を踏み入れるやいなや、えんがちょをしつづけた。しつづけないではいられなかった。
 そこは境界だった。境界は穢れきっていた。そこに繁りわたる帰化植物は、みずから境界を越えてやってきて、そこに定住してしまったものたちだった。

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2015年1月。亀岡。
「しっろいなあ」と、みっちんは言う。


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by KARAIMOBOOKS | 2015-01-22 18:01 | 新入荷
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