石牟礼道子キャンペーンはもちろんいまだ続いています。
石牟礼道子は、高校生の時、受験勉強の問題で出会いました。 亡父の故郷の村を訪ねて天草の島を歩くうち、島の山深い一軒家に住む老婆に出会うというエッセイでした。 わたしの願う世界を描き出した人がいた、という驚きと喜び。このエッセイは、『妣たちの国』(講談社文芸文庫)に収められています。今読み返しても、そのときと同じ喜びがふつふつと湧く。そして、ああやっぱり手に入らないものなのだなあとため息が出ます。 海の光の消ゆる向うの、あそこらあたり、あそこ、ここの山の間に、人さま方のおんなはる。逢わんけれども、なつかしさよ、ちなあ、夕方の陽いさま拝むたんびにこの山ん中から、想うようになりましたがなあ(言葉の秘境から) 石牟礼道子の描く世界は、過ぎ去りの水俣、天草であり、しかしかつても存在しなかったかもしれない世界です。私たちは天草や水俣がすきでよく訪れますが、ここに今、石牟礼道子の世界があるわけではもちろんありません。 それでも、芯から親切な人にはたくさん出会います。 「このよな山ん中まで、わざわざ来てもろて、申し訳なさよ」 婆さまは小さな声でくり返しながら、中屈みの膝を浮かせては立ってみたりして、落ちつかなかった。 「ああ、お客人にさし出すもんが、なあんもなかよ」(言葉の秘境から) こんなに引用までしておいてなんですが、いま、『妣たちの国』はKARAIMO BOOKSには在庫がありません。ごめんなさい。
by KARAIMOBOOKS
| 2009-03-28 01:39
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