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新入荷。石牟礼、水俣、島尾ミホ、丸木俊、栗原康、原民喜、クレジオ、目取真俊、崎山多美、野呂邦暢、津島佑子、管啓次郎、串田孫一、西江雅之ほか
カライモブックスの奥田直美が編集人となった
『ちいさい・おおきい・よわい・つよい 115号 親になるまでの時間・前編――ゆるやかな家族になれるかな? 浜田寿美男・著』
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『百年の散歩』多和田葉子、新潮社、2017年、 「コルヴィッツ通り」より引用

 母親は「何を馬鹿なことをしてるの。ほらもう行くわよ」などと怒鳴ったりせかしたりしないで、子供の後ろ歩きを忍耐強く見つめている。多分、自主性とか創造性とか遊びなどのキーワードを頼りに、自由教育を実施中なのだろう。とわたしは多少の皮肉をこめて解釈するが、正直言うと、自分の母親にも日の当たる無人の野原みたいに明るくて悲しい気分の日があったことを思い出して動揺しているのだった。ある気分の複雑な構成要素は外からは見えない。この母親が今この瞬間本当は何を考えているのかは誰にも分からない。何か悲しいことがあって子供のしていることを修正する余裕がないだけなのかもしれない。恋をしている最中で、子供には関心が持てないのかもしれない。後ろ歩きをして転んで子供が痛い目に遭えばいいと思っているのかもしれない。子供が転んで泣き叫び、まわりの人たちが注目してくれることを密かに期待しているのかもしれない。そういう親だっている。子供は親のすべての表情、仕草、言葉を解釈できないままに記憶し、夜空のように肩に背負って歩いていく。子供が二人くらいいても不思議はない年齢に達してからちりばめられた星と星をつなぐように記憶の断片をつないで、柄杓や熊のかたちをした星座を描いてみて、雪の中を後ろ向きに歩く自分を黙って見つめていた母親の心境はこうだったのではないか、ああだったのではないか、と思いめぐらすこともあるだろう。
 子供は背後に無限に広がる空間に一歩ずつ踏み込んでいく。未知の空間での冒険がこんな日常的な時間に含まれていることを知っているのは子供たちだけだ。わたしがわざとその場に踏みとどまって道をあけなかったので、子供はどしんとわたしのお腹にぶつかって、首をすくめてわたしの顔を見上げると今度はきゃっきゃと笑い始めた。やっとぶつかる人がいたことを喜んでいるようにも見えた。誰にもぶつからないで、どこまでも母親から離れていってしまうなんて子供の望んだことではない。わたしの方も暖かい塊を全身で受け止めた瞬間、不思議な満足感を得た。体当たりとか、押しくらまんじゅうとか、そういう遊びがあったことも思い出した。
 子供がいつまでも笑いころげているので、母親が名前を呼んだ。子供は笑うのをやめて、ぱらぱらっと母親の元に駆けていった。限りなく繰り返される母と子の時間。毎日買い物に行く。今日も行く。明日も行く。あと何回行くのか、数えることなどできない。無限の繰り返し。本当は無限ではなく、いつか終わりが来る。終わりは刻々近づいいている。



新入荷。石牟礼、水俣、島尾ミホ、丸木俊、栗原康、原民喜、クレジオ、目取真俊、崎山多美、野呂邦暢、津島佑子、管啓次郎、串田孫一、西江雅之ほか_c0184882_12001909.jpg

2017年4月。水俣湾埋立地の水たまり。


蝉和郎 石牟礼道子
思想の科学 78号 特集=水俣の現在 1986
みなまた海の声 石牟礼道子 丸木俊・丸木位里
言いたいことがありすぎて 丸木俊
海嘯 (銀河叢書) 島尾ミホ
月下の渦潮 島尾敏雄
眼の奥の森 目取真俊
風音 目取真俊
三田文學 127号 目取真俊『露』収録 2016
うんじゅが、ナサキ 崎山多美 2016
風の御主前(うしゅまい)―小説・岩崎卓爾伝 (ケイブンシャ文庫)大城立裕
消えゆく沖縄 移住生活20年の光と影 (光文社新書) 仲村 清司
沖縄 何が起きているのか 世界臨時増刊 2015
現代暴力論 「あばれる力」を取り戻す (角川新書) 栗原康
3・12の思想 矢部史郎
魂の労働―ネオリベラリズムの権力論 渋谷望
コンサイス20世紀思想事典 第二版
氷山へ (批評の小径)  ル・クレジオ
嵐 ル・クレジオ
隔離の島  ル・クレジオ
フライデーあるいは太平洋の冥界/黄金探索者 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集)ミシェル・トゥルニエ、 ル・クレジオ
さまよえる星  ル・クレジオ
斜線の旅 管啓次郎
本は読めないものだから心配するな〈新装版〉管啓次郎
往復書簡 詩と世界の間で―大岡・谷川対話集〈3〉 大岡信、谷川俊太郎
原民喜ノート  仲程昌徳
棕櫚の葉を風にそよがせよ (野呂邦暢小説集成1)
草のつるぎ (野呂邦暢小説集成3)
あまりに野蛮な  全2巻 (講談社文芸文庫) 津島佑子
歓びの島 (中公文庫) 津島 佑子
硝子障子のシルエット―葉篇小説集 (講談社文芸文庫) 島尾敏雄
紫苑物語 (講談社文芸文庫)石川 淳
現代小説クロニクル 1980~1984 (講談社文芸文庫) 島尾敏雄、増田みず子、藤枝静男ほか
幼年 その他 (講談社文芸文庫)福永武彦
告別 (講談社文芸文庫)福永武彦
白暗淵 (講談社文芸文庫)古井 由吉
鳴滝日記・道 岡部伊都子随筆集 (講談社文芸文庫)岡部伊都子
補陀落渡海記 井上靖短篇名作集 (講談社文芸文庫)井上 靖
風流尸解記 (講談社文芸文庫)金子光晴
人よ、寛かなれ (中公文庫) 金子光晴
草迷宮 (岩波文庫)泉 鏡花
或る少女の死まで―他二篇 (岩波文庫)室生犀星
渚から来るもの 角川文庫 開高 健
季 (百年文庫) 円地文子、 島村利正、井上靖
泪 (百年文庫) 深沢 七郎、 色川 武大、島尾ミホ
幻 (百年文庫) 川端康成、 ヴァージニア・ウルフ、尾崎翠
川 (百年文庫) 織田作之助、 日影丈吉、室生犀星
岸 (百年文庫) 中勘助、 寺田寅彦、永井荷風
ルビコン・ビーチ (ちくま文庫) スティーヴ・エリクソン 島田雅彦訳、
少年の日の思い出 (草思社文庫) ヘッセ
森の小道・二人の姉妹 (岩波文庫) シュティフター
わたしが人生について語るなら (ポプラ新書)加島 祥造
太陽の涙 (Coffee Books)赤坂 真理
台風の眼 日野啓三
悪声 いしいしんじ
海と山のピアノ いしいしんじ
馬たちよ、それでも光は無垢で 古川日出男
雑木林のモーツァルト  串田孫一  見返しに著者署名入り
四季の語らい 串田 孫一
沈黙の歌  串田 孫一
日本の一文 30選 (岩波新書)中村 明
異郷日記 西江雅之
花のある遠景 (東アフリカにて)西江雅之
やまかわうみ vol.5(2012/夏)―季刊 西江雅之自然児的世界観のすすめ
春の散歩 入沢康夫
われらが風狂の師 全2巻 青山光二 
マチネの終わりに  平野啓一郎
メディアは戦争にどうかかわってきたか 日露戦争から対テロ戦争まで (朝日選書) 木下和寛
鏡のなかの帝国:世紀末日本イデオロギー評註 太田昌国
日々ごはん 高山なおみ
チューの夢 トゥーの夢 難民キャンプの子どもたち たくさんのふしぎ
ほか

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